研究内容

コムギとその近縁種を材料に、環境応答による種内分化と、種間雑種の形成や異質倍数種の成立に関して遺伝学的研究を行っています。 パンコムギは世界でも最も重要な作物の1つですが、日本人の食生活にも古くから深く関わっている大切な穀物です。パンコムギは、A, B, Dの3つのゲノムを併せもつ異質倍数体として知られています。その独特なゲノム構成は、魅力的で個性溢れる遺伝学研究の展開を可能にしてくれます.
 

1.コムギの環境応答と種内多様性に関する研究 

パンコムギは、出穂開花特性の違いと関連しながら、低温馴化と凍結耐性、さらに植物ホルモンであるアブシジン酸応答性に関して、幅広い種内多様性を示します。また、タルホコムギなどの近縁野生種も集団内に大きな遺伝的変異を抱え、穂や芒、穀粒の形態、開花関連形質について自然変異が認められます。このような遺伝的多様性の実体を明らかにして、原因遺伝子の特定を目指しています。
 

2.種間雑種コムギにみられる生育異常に関する研究

異質倍数性進化によって新たな種を産み出してきたコムギ・エギロプス属植物では、種間雑種を作出することができます。しかし、その雑種コムギには顕著な生育異常がみられることが多々あり、異質倍数体の成立を阻害する遺伝的要因として働きます。このような雑種にみられる生育異常について、その発症メカニズムを解明し、原因遺伝子の特定を目指しています。
 

3.合成コムギを利用した近縁野生種の育種的利用に関する研究

パンコムギの成立過程は、人為的に再現できます。そのようにして作出したコムギを合成コムギと言い、近縁野生種のもつ有用な遺伝子をパンコムギ育種に用いるために仲介してくれる系統として役立っています。合成コムギ系統群を作出しながら、タルホコムギをはじめとした近縁野生種のもつ様々な遺伝子が、うまく異質倍数体の遺伝的背景でも機能するのかどうかについて、検証を行っています。
 

4.コムギとその病原菌の相互作用研究

近年、植物と病原菌の分子レベルでの攻防が、予想を超えるようなダイナミックで、複雑な相互作用が起きていることが分かってきました。私たちは、コムギとその病原菌の相互作用に関与する遺伝子を同定し、その機能を調べます。そして、これらの遺伝子がどのように進化してきたのかを明らかにすることを目指します。
 

5.次世代シーケンサーを用いたコムギ遺伝子単離法の研究

これまで、コムギのゲノムサイズは、生物の中でも飛び抜けて大きく、遺伝子単離をするのに困難をともないました。近年、DNAやcDNA配列を決定する技術が、飛躍的に向上し、ゲノムサイズが大きな種でもゲノム配列やcDNA配列を網羅的に調べることができるようになりました。我々は、最新のシーケンサーから得られたDNA情報を利用し、迅速に有用な遺伝子を単離する技術の開発を目指します。